③栄光
我輩はコーヴァス帝国三番隊隊長アステルである。
我が軍はこの度、憎き相手アレクシード王国のベルモンドを地に伏せ、
歴史的な大勝利を収めた。
貿易商が先日入手した銃と我が騎馬隊が獅子奮迅の活躍を見せたのである。
ただ、この「銃」と呼ばれる兵器にはさぞ驚かされた。
人差し指を少し動かすだけで遠方にいる敵を倒すことができるのだ。
時代は移ろい行くものである。
そして今日は勝利を祝し、
町を一周する『凱旋行進』が催されるのである。
大きな馬車のようなものに乗って町中を闊歩する、
こんなにも気持ちが良いことは無い。
いつものように馬がいない馬車に乗り、
町へと繰り出す。
この馬車は煌びやかな装飾が施されており、
非常に美しい。
我輩のお気に入りである。
行進の際はいつもこの馬車に乗ることにしている。
大衆が私に向かって大きな歓声を上げてくれている。
私は手を振ってそれに応える。
中々気分が良くなってきた。
自然と音楽に乗って体が動き始める。
私の踊りに合わせて観衆も踊り始める。
なんとも私たちが一体になったような気分だ。
ふと横を見ると、戦友である四番隊隊長フレンがいるではないか!
「これはこれはフレンよ、さきの戦いではご苦労であった!
見事な活躍だったな!故郷の母君もさぞ喜ぶであろう!」
そう、声をかけたのだが返事は無い。
まぁ、いつものことだ。
フレンは中々心を開いてくれないのだ。
軍の勝利の際には毎回『凱旋行進』が催されているのだが、
何回町を巡っても飽きることは無い。
人が入れるような箱が付いた巨大な車輪や
馬の育成場、古びた館、
極めつけは悲鳴が聞こえる高速馬車。
私が行進以外で町に出たことは無いのだが、
あの馬車に乗せられるのは御免である。
そろそろこの行進も終わりに差し掛かる。
何とも贅沢な時間であった。
我が帝国の益々の繁栄を切に願うばかりである。
再びこれが催されるように
我が隊の訓練も今まで以上に厳しく、、、、、、
「ご来場のお客様にお伝えします。
音響トラブルのため一部演出をカットして
パレードをお送りさせていただきました。」
「この後もどうぞごゆっくり、、、、」